置き場所や素材で音が変わる〜駒〜

ふれる

皮と糸の間に「駒」を立てることで、胡弓の音は響きます。

小さな部品ですが、これが音に大きな影響があります。

形や素材によって、音を変えてしまうほどの力がある駒についてお伝えします。

駒は焦らずにゆっくり、垂直に

駒には3つの溝が入っており、それぞれの溝に、3本の糸がハマるようになっています。

溝はそれぞれ高さが異なり、高さが高い溝に三の糸、低い溝に一の糸をハメます。高さの違いが微妙な場合は、ひと目でわかるように印をつけておくのがオススメ。

駒の上下を確認したら、次の順序で駒を立てます。

①人差し指で糸を持ち上げる。

→糸が持ち上げにくい=糸の張りが強い時は、糸巻きを少し緩めて、糸を持ち上げやすい状態にする。                          

②持ち上げた隙間に駒を滑り込ませる。

③三本の糸をそれぞれの溝にハメる。

④駒を真上から見て、垂直に立つよう微調整する。

→駒が斜めになっている時は、演奏中に倒れたり、駒が割れてしまうこともあるので要注意。

立てている途中に、糸のプレッシャーに押されて駒が倒れたり、溝にうまくハマらなかったり…最初のうちは色々とトラブルがあるかもしれません。

そうならないよう、駒を立てるときは、焦らずにゆっくりと行ってください

駒の置き場で音が変わる

どこに駒を立てるか?を考えるとき基準となるのは皮の張り具合です。

胡弓の皮が、四方八方に引っ張っられて貼り付けてある現状を想像してみてください。
その張り具合=テンションは、縁にいくほど強く、真ん中ほどゆるくなります(トランポリンやポッコリお腹!を想像してみると、わかりますよね。真ん中ほど柔らかい)。
この張り具合=テンションが、そのまま音に反映されるわけです。

駒を置く場所が、縁に近ければ近いほど、張りが強い=テンションが強く硬い音となり、真ん中に近づくほど、張りが弱い=テンションが弱く柔らかい音になります。

さて、改めて胡弓の胴をみてみましょう。

駒を置くのは、写真の指のあたり。胴縁に近づくほど硬い音に。
中心に近づくほど、テンションはゆるく=音が柔らかくなる。

胴縁に貼りついている皮は、一切、振動しないものとしましょう(糊でしっかり接着してますから)。
実際、胴縁の上に駒を置いても、皮はほとんど振動せず、糸の音が鳴るだけです。そこで、胴縁にかかってない皮のラインを基準に、ここから1センチ開けた場所を標準として、駒を立てましょう。
慣れてきたら、出したい音に応じて、そこから駒を内外に移動します。硬い音を出したければ縁側へ、柔らかい音を出したければ中心側へ移動する、といった具合です。最初のうちはあちこち移動して、音の違いを検証してみるのもいいかもしれません。でも、慣れてきたら、移動距離は、ほんの少し、0.1㎜単位。微妙な音の違いを楽しむのが、胡弓の醍醐味です。

駒の移動になまくらは厳禁!

糸がピン!と張っているとき、その下敷きになっている駒は、大きな力=プレッシャーがかかっています。
駒を移動する際は糸を持ちあげて、プレッシャーから開放させた状態で移動しましょう。

糸を持ちあげずに、駒と接着した状態=プレッシャーがかかった状態で移動すると、駒が割れる原因になります。

特に竹製の駒は、節のラインからパキッと割れることがあります。
駒の移動はなまくらせず、丁寧に行いましょう。

うまく立てれば駒は倒れないよ

胡弓の駒は、竹や木を山のような形に削り出した一枚ものが一般的です。

それだけでは自立できず、糸と皮の間に挟み込むことで立った状態になるわけですが、うっかり垂直ではなく、少し斜めに立てたりすると演奏中に倒れる場合があります。糸の圧力をまともに受けた状態で皮に向かって倒れ込むわけですから、それはそれは、ピシャーーー!!と相当に大きな音が出て、驚かされます。これを避けるために、それ自体で自立できるように足をつけた駒があります。確かに、倒れる心配はありませんが、デメリットもあります。

自立できるように底を厚くした駒。

胡弓は糸の振動を駒に伝えて、皮を共鳴させて発音する仕組みになっているわけですが、駒と皮との設置面積が増えるほど、皮の振動を押さえ込む(皮が振動しにくくする)という状況を作ってしまいます。駒に足がついている、ということは、駒が皮の振動を妨害している、という側面もあり、音の伸びを殺してしまうことになりかねません。足つきの駒を使用する際は、このデメリットを理解して使用するようにしましょう。

そもそも、駒はそう簡単には倒れません。駒を立てる際に、糸や皮に対して垂直に立てる(斜めにならない)よう注意を払うことで、駒は倒れません。倒れることを駒のせいにしないで、「立て方」を丁寧に行うよう心がけましょう。焦らずゆっくりトライしてください。

通り道が変われば出口(発音)も自ずと変わる

くり返しになりますが、胡弓は糸の振動を駒に伝えて、皮を共鳴させて発音する仕組みです。従って、音の通り道となる駒は、音色に大きな影響を及ぼします。置く場所によって音が変わってくるのはお伝えした通りですが、駒自体の大きさや高さといった形、また、素材によっても音が変わってきます。

音を出す場所によって、一緒にあわせる楽器によって、季節によって、気分によって、丁度いい音が出せるよう、いくつかの駒を使い分けるのが理想的です。
「おわら胡弓」をはじめ、胡弓の駒の多くは古来から「竹」を削り出して作られました。軽く硬く、加工も比較的しやすい竹は、胡弓の駒に最適な素材といえます。

これまで色んな素材で試したので、そのレポートです。検証は、胡弓奏者misatoによるものです。

①「紅木」駒 〜低音で潰れたような音、高音で縦に伸びる繊細な音

②「朴木(ほうのき)」駒 〜軽く伸びのある印象、ポップな広がりがある音

③「樫(かし)」駒 〜全体的に柔らかく膨らむ優しい音色、中音~高音で潰れる印象

④「白紅木」駒 〜低音で音が散らばる(ガサつく)印象、高音で繊細な音だが、伸びに欠ける印象

⑤「桜」駒 〜全体的に響きにくく、竹駒に比べて強めの音、薄いほど悪くはない

ちなみに、竹駒は「伸びがある、広がりのある音。飛距離がまっすぐで、音の輪郭がはっきりでる」というのが特徴、とのこと。

どの素材もそれぞれに特長があるので、今後も色々な素材を試してみながら、その場その場に最適な駒をセレクトしていきたいものです。

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