ヤフオクやメルカリや巷のセカンドショップで中古楽器を買い求めるのが、特別なことでなくなってきました。
運がよければ、新品の価格の半額以下で手に入ることもあるわけで、購入者心理がくすぐられるのも納得。
一方で、ジャンク品を掴まされたり、「修理をしたら新品以上の価格になった」といった声も聞きます。
胡弓を中古品で購入するときの注意点をまとめてみました。
チェックポイント3選
出品された胡弓を見つけたら、次の3のポイントをチェックしましょう。
- 棹に割れや欠けがないか? 〜危険箇所は先端と「胴の中」〜
- 皮や胴の状態はどうか? 〜割れるだけでない、剥がれる、ズレる!?〜
- 小物は揃っているか? 〜高価なものほど付属していて欲しい!〜
それぞれについて深掘りしていきましょう。
❶隠れたところが割れている!?かも
棹のなかでもっとも割れやすいのが「月形」と呼ばれる天神の曲線部分。
一般的には「天神カバー」と呼ばれるキャップをハメて、割れないようにカバーするのだが、棹職人は先端をできる限り細く加工するため、いかんせん、割れやすい。
特に、胡弓を床に置く習慣がある方は、硬い床にあたったときに「月形が欠けた」なんてコトはよくある話。
胡弓奏者にとっては「天神を欠けから守る」カバーが、中古品出品者にとっては「天神の欠けを隠す」カバーになりかねない。
中古品やその写真を見た時に、その「天神カバー」を外して、天神が欠けてないか?を確認することは必須事項。カバーを外した写真がサイトにあがってない場合は、見せてもらえるよう催促しよう。
次に確認するのは、月形がある天神の反対側の端にあたる「中子(なかご))」。
この中子は、棹が強い衝撃を受けたときにバキッと折れないよう、あえて「弱い部分」をつくって、中子で折れるよう設計してある部分。だから、よく折れてます。だって、折れるように設計してある、わけですから。とはいえ、その分、すぐ治るように設計してある、ともいい替えられます。
逆に出品者が「折れているから安価で」という場所が中子だったら、儲けもの?かもしれません。ただし、これはキレイに折れている場合に限るので、「折れ方」について見極めることも大切です。
もうひとつ、もっとも盲点なのが、棹の継目(つぎめ)。ある程度の高価な胡弓であれば、棹が2分割できるようになっています。
これは三味線の伝統的製法に基づくもので、分割できるとすれば、棹に継目が存在します。この継目が、実は割れやすい。完全に割れていれば出品者も気がづきますが、問題は「割(さ)けている」あるいは「ヒビが入っている」という状態。
一見しただけではわからないけど、よく見たら割れている、ということが、この継目付近では起こりやすい。
分割できる棹であれば、継目が大丈夫か?出品者に確認をうながすことをオススメします。
❷皮だけでなく、胴も割れる!?
皮が割れているかどうか?は、一見してわかる場合が多い。その一方で、皮が剥がれているかどうか?は、一見してわからない場合があります。
胡弓の皮は「糊」によって胴に張りついていますが、管理状態や経年変化によって、乾燥する等の理由で糊が剥がれて、皮が浮いている時があります。割れていない皮でも、胴縁の付近に違和感を感じることがあれば、皮が剥がれているかも?と考えて、問い合わせてみるとよいです。
胡弓において、皮が割れたり剥がれたりは想定内ですが、それが価格に反映されているかどうか?(一般的に割れていれば安いし、割れてなければ高い)を見極める必要があります。
さて、胴が割れている、というのは、どんな状態でしょうか。
実は、胡弓の胴は4枚の板を張り合わせて構成されています。寄り合わせた4枚の板の両面をふさぐようにして皮が張られているわけですが、どちらか片面の皮が割れた場合、もう片面の皮(割れてない方)の張力に引っ張られて、4枚の板それぞれに外側へ向かう力がかかります。
その結果、張り合わせた4枚の板の接着面がズレたり、最悪の場合、割れる、という事態になります。もし割れても修復はできますが、皮と同様に、現状が価格に反映されているかどうか?を確認する必要があります。
❸「すべて揃っている」は無いと思うべし
中古品の多くは「長く放置されていて、使わないから手放す」というもの。とすれば、経年による破損、あるいは、紛失していて当然と思いましょう。
要は、何が足りなくて、修繕等のためどれほどの出費が必要か?を把握することが必要です。胡弓を弾くにあたり、もっとも劣化しやすく、かつ、購入後の出費に関わるものは「弓」。
前の利用者の使い方次第ではありますが、弓につける「馬毛」については、新しいものを架け替えた方がよい場合が多いです。
続いて出費に関わる小物は「糸巻き」です。
どこかにぶつかって折れたり、、経年劣化で締まりが悪かったり、どれかが抜けて紛失、ということがよくあります。1本ならまだしも、全部だとすると3倍なので、それなりの出費です。
気が付きにくいものとしては、上駒や福林、いわゆる「金物」類です。小さいパーツですが、いずれも欠かせないものなので、付属していなければ修理に出して、補充しましょう。
糸は消耗品と思い、仮に付属していても、新しいものに取り替えましょう。
その他、演奏のための必需品として「音緒」「駒」「松脂」、あったほうがいいものとして「指掛け」「棹ふき」があげられます。
いずれも少額で買い揃えられるので、購入後に不足していれば買い足すというスタンスでよいかと思います。
胡弓を弾くのに必要な主な小物:弓、馬毛、駒、上駒、音緒、糸、糸巻き、福林、指掛け、棹ふき
出品者自身もよくわかっていない!?
胡弓を弾いていた人が出品しているとは限りません。むしろ、そんなケースは稀。親が弾いていたもの、知人が持っていたもの、あるいは、中古品買取業者が引き取ったもの、という場合がほとんどです。
つまり、出品者自身も、胡弓とはどんな楽器なのか?をよくわかっていないことが多いのが現状。その場合、購入する方が知識を持っていなければ損をする、ということになりかねません。
この記事を参考にして、あるいは、気になる品があったら、詳しい人に相談をしてから、購入を決めましょう。
理想的なのは、購入した後に修理をお願いする和楽器店に相談すること。
あなたが中古品を購入することで、和楽器店は修理の仕事が得られるので、ウィンウィンの関係で相談できます。もっとも、中古品の購入について相談をしたつもりが、新品を買ったほうがいいね、ということになるかも、、ですが。