おわら風の盆の音楽、あの切ない音色は何の楽器?

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おわら風の盆とは

おわら風の盆は、富山県富山市八尾町で毎年9月1日〜3日に行われる、富山県を代表する行事の一つです。
「風の盆」という名前は、稲の実りの時期に台風などの「風」の被害を鎮めるよう願ったことに由来するとも言われています。風の盆では、町をいくつかの地区に分け、それぞれの踊り手・演奏者・唄い手が「町流し」や「舞台踊り」を行います。派手な山車や花火はありません。

ただ、音楽と踊りと、石畳の路地。その静けさの中に、恐ろしいほどの美しさがあります。


毎年20万人以上が訪れる人気の行事でありながら、どこか静謐(せいひつ)な余韻を残す。それがおわら風の盆の不思議な魅力です。

あの音色の正体は「胡弓」

浴衣姿の踊り手たちが、提灯の灯りの中をしずかに流れていく。
その情景を彩るのが、どこか懐かしく、胸に刺さるような、「あの音色」

「あの音、なんだろう」と思ったことはありま
せんか?

音色の正体は「胡弓」と呼ばれる楽器です。

胡弓は、日本の伝統的な擦弦楽器(さつげんがっき)——つまり、弓で弦をこすって音を出す楽器です。
見た目は三味線に似ていますが、バイオリンのように弓を使って演奏します。

その音色は、一言でいえば「泣いているよう」。
高く細く、それでいてどこまでも伸びるあの音は、おわらの踊りの「間(ま)」や、夜の八尾の空気と溶け合うように作られているかのようです。
聴いた人の中に「なぜか涙が出た」と語るのも、胡弓の音色の力によるところが大きいのではないかと思います。

胡弓って、二胡やバイオリンとは違うの?

似たような楽器がたくさんあって、ちょっとわかりにくいですよね。簡単に整理してみます。
二胡(にこ)は中国の楽器で、胡弓とは別物です。
馬毛を擦って音を出すのは同じですが、糸(弦)の数も音色の方向性も奏法も異なります。
おわらで使われているのは、あくまでも日本の胡弓です。

バイオリンは西洋の楽器で、4本の弦を持ちます。二胡はその名の通り、2本の弦でできています。
胡弓は3本弦が一般的で、音の作り方や音色の質感がまったく異なります。
胡弓の音はより「かすれ」や「揺れ」を含んでいて、それがあの哀愁の源になっています。
実は、胡弓は現在の日本では演奏できる人がとても少ない、希少な楽器。
全国的に見ても、専門的に学べる場所はほとんどありません。

三味線・胡弓・唄——三位一体の音楽

おわらの音楽は、胡弓だけで成り立っているわけではありません。
三味線(しゃみせん)、胡弓、そして唄(うた)の三つが重なり合うことで、はじめておわらの音楽が完成します。三味線がリズムと骨格を作り、唄が言葉とメロディーを載せ、胡弓がその間を漂うように音色を重ねる。
三者がぴったりと息を合わせることで生まれる、あの独特の「間」と「揺れ」こそが、おわら音楽の核心です。
町流しの列に近づくと、音楽が少しずつ大きくなってくる。やがて胡弓の音が耳に届いた瞬間——そこではじめて「おわら風の盆に来た」と感じる人も多いのではないでしょうか。

胡弓の音色に、もっと触れてみたい

おわら風の盆は、9月1日〜3日のわずか三日間だけ。
でも、胡弓の音色はその三日間だけのものではありません。
このメディアサイトを運営している「楽家」では、胡弓や三味線について、演奏・歴史・楽しみ方をさまざまな角度からお届けしています。
おわら風の盆をきっかけに胡弓に興味を持った方も、ぜひほかの記事も覗いてみてください。
また、胡弓を弾いてみたい&学びたい方向けに、東京と富山にて教室も開講しています。
八尾町育ちの胡弓奏者が、おわらの音楽を一から丁寧にお伝えします。
あの夜の音色の秘密を、一緒にひもといていきましょう。

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