おわらの里に生まれ育つ
越中おわら節の故郷「富山市八尾町」に生まれ、「立てるようになった頃にはもう踊っていた」という。
生まれた時から空気と同じように流れている胡弓の音色を、圧倒的な量で聴いてきたmisatoさん。
現在は富山市岩瀬のほか、東京都内(文京区千駄木、調布市)を拠点を設け、自身のプレイヤー活動とともに、後進の育成に力を注いでいる。
インタビュー
胡弓をはじめて弾いたのは、地元・八尾高校の郷土芸能部に所属した高校生の頃。その時は上手く弾けずトラウマに。。。大学時代はロックバンドに明け暮れていたというmisatoさんが、再び胡弓を手にしたのは?そのきっかけは?
ブランクを経たら上手くなってた!?
勤務先の三味線ショップのお客さんから「胡弓を教えてもらえますか?」と相談を受けたんです。
胡弓については高校時代のトラウマがあったのですが、その後にベースや津軽三味線を経験したおかげでしょうか、久しぶりに胡弓を弾いてみたら、上手に弾けたんです(笑。
幼い頃からの引き出しが「パッ」と開いて、記憶をなぞるようにして、胡弓が弾けるようになっていました。
タイミングやモチベーションって、すごく大切なんですよね。
若い頃に挫折した経緯もあって、再び手にしたときにいい意味で力が抜けていたのかもしれません。
若い頃は、力が入りすぎて、コントロールが下手ですからね(笑。
勤務先は三味線ショップ。子どもの頃からの踊りや唄、大学時代のロックバンド、さらには、津軽三味線と幅広く経験してきたくmisatoさんが「胡弓」を選んだのは、どうしてでしょうか?
胡弓は性格にあっている
胡弓の特長という意味でいうと、ずっと音を繋いでいけるということかな。
笛や尺八と違って息つぎがないし、三味線や太鼓といった打楽器とももちろん違います。
三味線はアタックが強いので、インパクトがあって、主張が強いイメージがありますよね。
直線的な三味線に対して、胡弓は「空間に広がっていく、溶けていく、なじんでいく」というイメージ。
あんまり主張しないけど、周囲と上手く馴染みながら、埋もれるのではなく、個性を出し続けて、周囲にとけ込むことができる。
だから自分の性格にあっているんです。
自分は引っ張っていくというよりは、みんなとうまくなじむ、気持ちのよい存在でありたいと思っています。
とけても埋もれない、存在感を出しつつも、周囲とうまく馴染む。
そんな性格の方が手に取る楽器なのかもしれません。
おわらの里・富山市八尾町に生まれ育ちながら、おわら節だけではなく、J-POPやアニメソング、洋楽、クラシック…など、幅広いレパートリーをもつmisatoさん。その原動力はどこから生まれてくるのでしょうか?
胡弓を進化させたい!絶滅させないために
幼い頃から、胡弓といえば「おわら節」というのが当たり前だったんですが、色々な人から「胡弓って、中国の楽器だよね?二胡だよね?」と聞くたびに、愕然とした思いを味わってきました。
「自分が幼いときから聞いていた音を、みんなは知らないの?」というのがショックでした。
江戸時代からある伝統楽器が、大陸から入ってきたものに食われてしまうような、
もともと日本にあったものが、今やほとんど知られていない絶滅危惧種になっていることに、「このままでは絶えてしまう、なくなってしまう。なんとかしなければ!」という使命感すら感じています。
そのためには、伝統楽器として大事にしていくのはもちろん大事なんですが、楽器として進化、発展させたい。
私のルーツである「おわら節」を根幹としながらも、時代にあわせたポジションをつくってあげて、胡弓を認知していただくように活動していかなければいけないと感じています。
風の盆で弾く胡弓は格別!
とはいえ、風の盆は格別です。毎年のことですが、いつも興奮とともに身が引き締まる思いですね。
三味線や胡弓の音色が町にとけ込み、唄や踊りと一緒になって緩やかに流れていく様子は、俗世から切り離された幻想的な時間です。
この時間を、生徒さんと一緒に味わうのが、教室の当面の目標です。
「いろんな曲を教えて欲しい」という生徒さんからのリクエストに、できる限り答えるmisato先生。例えばどんな曲のリクエストが? また教室運営で大切にしていることや目標は何でしょう?
楽しんで弾いていただくことが一番!
最近はクラシックが増えてますね。ショパン、ノクターン、G戦上のアリアとか。
他にディズニーもあれば、日本の伝統曲のリクエストもあります。
生徒さんが希望する曲は、どんな曲であっても「これは無理だよ」「まだ早いよ」ということは言わないで、アプローチの仕方を一緒に考えます。
生徒さんが掲げた目標にアプローチできるよう、否定せずに導くよう心がけてます。「うまくなりたいのか?とことん楽しみたいのか?」「何がしたいか?どうなりたいのか?」を確認しながら、押しつけず、楽しく演奏する気持ちを大事にしてもらってます。
そしていずれ教室を開いて、どんどん胡弓を広めていって欲しい。胡弓を教えてくれる仲間がどんどん増えたらいい、と思っています。
胡弓を教えたい、という方には、教室を開設する方法や生徒さんの集め方も指導させていただきます。
先生としてだけでなく、胡弓奏者としても活躍するmisatoさん。プレーヤーとして大切にしていること、夢や目標は?
胡弓って、こんなに面白いぞ!
大事にしていることは、、、まず、自分自身が楽しむことですかねえ(笑。
胡弓奏者としての第一人者というより「胡弓の楽しさを広める第一人者、インフルエンサーでありたい」と思っています。
私は著名な先生のもとで胡弓を習得した訳でなないので、自由な発想ができる。
フリーだからこそできること、それは、胡弓の楽しさを広げていくことかと。
「胡弓って、こんなに面白いぞ」ということを広めていく奏者になることが目標です。
そして日本の伝統楽器である胡弓を、世界中の人に知ってもらえればいいなあ、と思います
基本情報
misato(舘谷美里・たちだにみさと)・1990年3月25日・富山県富山市八尾町生まれ
問合せ:076-471-5467(楽家:水曜定休) メール:info@shami1000rakuya.com
■教室情報
富山教室/富山県富山市東岩瀬町303
東京千駄木教室/東京都文京区千駄木3-15-6
東京調布教室/東京都調布市布田2-17-1