チューナーはあり、なし? そりゃ、アリでしょ!

ふれる

洋楽器では当たり前に使われている「チューナー」。ギターもウクレレも、バイオリンもコントラバスも、ほとんどの弦楽器は、調弦の際に「チューナー」を使うのですが、こと、和楽器の世界において、チューナーはタブー、とされる場面があります。さて、それはどうしてでしょうか? そして、胡弓においてチューナーは、どうとらえたらいいのかな?

チューナーってなんだろう?

まず、基本的な知識からおさらい。チューナーとは音を認識して、どの音が鳴っているか表示する機械です。日本の学校教育ではドレミファソラシドと習いますが、ほとんどのチューナーは、ABCDEFGで表記され、半音階を加えた12音階表記がベースになります。

チューナーを使えば、「チューニングを自動的にしてくれる」というものではありません。あくまでも、現状の音を教えてくれるだけです。とはいえ、音を鳴らしても、どの音がなっているか?を自分の耳で理解するまでには相当な時間を要するので、鳴らした音を教えてくれるだけでも、特に初心者にとっては大変に重宝するものです。

鳴らした音が目標より低いとわかれば、糸巻きを回し上げて音をあげる、逆に高ければ、糸巻きを回して音を下げる、といった方向性と着地点を示してくれる道具、というわけです。
こんな便利な道具は使わない手はない!と思いますが、和楽器の世界で、なぜチューナーが敬遠される場合があるのでしょうか?

平均がわかるから個性も理解できる

平均律といえばバッハ。かつて小学校の音楽教室に必ずと言っていいほどあった肖像画。

前述したとおり、チューナーが示す音は12音階です。これは「平均律」に基づく考え方で、周波数を均等に分割して音階を割り当てるという、ヨーロッパ音楽を源流とする合理的な音楽理論に基づいたものです。明治時代以降に日本の学校教育現場でも絶対主義的に!取り入れられているので、まるで全ての音楽が12音階に基づいている、と考えてしまう日本人も多いのですが、江戸時代までの楽曲には、まったく存在しない考え方でした。

つまり、日本の伝統楽器には、そもそも12音階は当てはまらないわけです。もっと具体的にいうと、12音階に当てはまらない音がたくさんある、というわけですね。


そのため和楽器のお稽古は、師匠と相対して行う「対面稽古」が主流になっています。和楽器が奏でる音は音階で表現できないので、目の前で聴こえた音を真似するしかないわけです。チューニングも然り。師匠はチューニングですら、その日によって違ったりするわけで、チューニングから膝を突き合わせて真似をしないと、どこを押さえても勘どころが違う、つまり「勘違い」というわけです。
日本の音楽教育は明治時代から、ほぼ変わらず平均律を主流としているにも関わらず、和楽器の現場ではそれを否定してきました。明治時代から変わらず交響曲を第一とする日本の音楽教育もどうか?とは思いますが、そこに歩み寄らずにいた伝統楽器もどうか?と思います。その結果、和楽器の衰退を招いた、とも考えられます。歩み寄りの第一歩が、チューナーと考えてみましょう。

多様性の時代に平均律を推しているわけですが、平均がわかるほうが個性がもつ意味もわかるというもの。最初はまず、平均を知るためにチューナーを使うことを、このサイトではオススメします。(チューナーをよしとしない方がいまだに多いため、少しくどい説明となってしまったことをお詫び申し上げます。)

ドレミファソラシドは目安と考える

チューナーを使うということは、そもそもドレミファソラシドを前提にしていない和楽器を、それにあてはめて考える、ということになります。その一方で、演奏する曲はドレミファソラシドを前提に作られた音楽である場合が多いのではないでしょうか。

歌舞伎および文楽より「阿古屋の琴責」の名シーン。胡弓が使われる数少ない伝統曲のひとつ。

平均律が取り入れられた明治時代以降につくられた日本の曲、つまり歌謡曲やポップスはもちろん、童謡や民謡さえもそのほとんどは、明治以降にドレミファソラシドによって創作されたものです。西洋音楽は言わずもがな。こと胡弓においては、現在残っているもので江戸時代までに制作された楽曲は、ごくわずか。これらの伝統曲を演奏するときを除けば、チューナーを使うことは決して悪いことでない、むしろ、作者の意図を再現するために使わなければいけない道具であるということがわかります。


とはいえ、平均律に収まらない無限の音を使うことこと、ドレミファソラシドで表現しきれない音を表現できることが胡弓の、ひいては、和楽器の醍醐味です。ドレミファソラシドは目安と考えて、その隙間にある無数の音に挑みましょう。「和楽器奏者」とは、そこにある無限の音を楽しめ人のことを言うのかもしれません。

スマホもいいけど・・クリップ式がオススメ

スマホの無料チューナーのひとつ「Tuner Lite」。

チューナーにはマイクで音を拾うタイプと、楽器の振動で音を認識するタイプがあります。スマホのアプリで「チューナー」と検索すると無料のアプリがあり、その仕組みは、スマホのマイクで音を拾って、音階を認識します。前述したうちの「マイクで音を拾うタイプ」になります。

このタイプは楽器そのものの音だけでなく、周囲の音を拾ってしまうので、静かな環境を確保して使う必要があります。ひとりで練習するときは大丈夫ですが、合奏する時は他の人も同様にチューニングをするので、いろんな音を拾ってしまって、自分のチューニングに集中できない難点があります。

振動で音を認識する「クリップチューナー」。

一方、振動で音を認識するタイプは、楽器の一部にクリップで取り付けることから「クリップチューナー」と呼ばれます。周囲の音の影響を受けにくいため精度が高く、かつ、安価で流通しているので、オススメです。胡弓に限らず、三味線やウクレレ、ギターなど、弦楽器のプレーヤーは、このクリップタイプのチューナーを使用する方がほとんどです。2000円前後から購入できるので、ひとつ持っておきましょう。

ほとんどクリップチューナーはマイクロ電池で稼働しますが、電池が切れたとき、あるいは、チューナーそのものを忘れるときに備えて、スマホのチューナーアプリをダウンロードしておけば安心です。どちらも使用方法はほぼ同じ。その使用方法について、このページでは基本的な考え方を紹介しておきます。

あくまでも自分自身でチューニング

チューナーを使う場合、冒頭に述べた「方向性と着地点を示してくれる道具」という定義を忘れないようにしましょう。チューナーが教えてくれるのは、あくまでも現状の音です。そこから「どこへ向かうか?」を決めて、実行するのは自分自身です。
胡弓は弓で弾きますが、チューニングの際は指で糸をはじきます。


チューニングの手順

①まず、音を鳴らします。
当てずっぽうに糸巻きを回す人がいますが、糸を切る原因です。間違いです。まず現状の音を把握してから回しはじめましょう。

②糸巻きを回す方向を確認します。(音を上げるか?下げるか?)
自分がどこへ向かっていきたいのかを確認します。オクターブの違いに注意しましょう。

③音を鳴らしながら糸巻きを回し、ねらった音に着地させます。
「まず音を鳴らす」のが重要です。音が鳴っている(糸が振動している)あいだに糸巻きを回し、あがっていく(あるいは、さがっていく)音を耳と目(チューナー)で認識しながら、着地させます。
この順番が逆な人、つまり、糸巻きを回してから音を鳴らす、という順番は間違いです。当てずっぽうに糸巻きを回すと、自分がどの音を出しているか?わからなくなり、当てずっぽうに糸巻きを回し続けて糸を切る、という結果に陥ります。

このページでは、チューナーの基本的な考え方と使い方がテーマでした。
さて、どの音にあわせるか?は「ふれる>チューニング、どうあわせる?」ページに書いていきます。お楽しみに。

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